微生物カテゴリー(細菌・酵母・カビ)の識別方法

当社での「微生物カテゴリーの識別」とは、細菌・酵母・カビの何れに該当するのかを判断することです。微生物の同定では、カテゴリー毎に試験・分析項目が異なるため、予めカテゴリーを知っておくことが重要となります。

例えば、遺伝子解析による同定の場合、対象微生物が細菌であるのか、カビや酵母であるのかのカテゴリーの判断を誤ると、適切なDNA抽出方法で試験できないことや、細菌に対してカビや酵母などの菌類に特有の遺伝子配列を増幅するプライマーを用いてしまうと、目的のPCR産物が得られないなど、分析を進めることができなくなります。

そこで、本コラムでは、当社で取り扱う微生物の中で、細菌・酵母・カビを見分けるための実践的な識別方法について紹介します。まず、目視および顕微鏡によるコロニー観察によって簡易的に微生物カテゴリーを識別することが可能です。より確実に微生物カテゴリーの識別を行うためには、各コロニーから作製したプレパラートについて、光学顕微鏡を用いた細胞形態観察が必要となります。

コロニー観察と作製したプレパラートの顕微鏡観察操作を繰り返して、経験を積むことで、コロニー観察による微生物カテゴリーの識別の精度は向上します。当社のテクニカルトレーニングでは、実際にコロニー観察や微生物カテゴリーの識別方法を体験いただけます。

 

1. コロニーの観察による識別

寒天上に形成されたコロニーの目視(肉眼)および顕微鏡観察を行います。

1-1. コロニーの目視および実体顕微鏡観察による簡易的な識別方法

微生物カテゴリーの識別ポイント

細菌酵母カビ
コロニーの色調1)明色系
(不透明~半透明)
明色系
(不透明)
明色系~暗色系
(不透明)
表面性状光沢あり/なし等
(湿性~乾性)
光沢あり/なし等
(湿性~乾性)
羊毛状/粉状等
(光沢あり/なし)
(湿性~乾性)
コロニーの質感2)軽い重い(~軽い)重い(~軽い)

 1) 本コラムにおける「コロニー色調」の「明色系」は白色(乳白色)、クリーム色、黄色、ピンク色などを示し、「暗色系」は褐色(茶褐色~黒褐色)、黒色や青/緑色などを示します。
2) コロニーの質感は、実際にコロニーを白金耳等で触れた場合の感触を表現しています(やや感覚的な表現にはなります)。

1-2. コロニー周縁部の顕微鏡観察による簡易的な識別方法
  コロニー周縁部を、寒天平板培地の裏面から光学顕微鏡で観察します。

【手順】平板培地を裏返しにした後、光学顕微鏡のステージに載せて、低倍の対物レンズ(例えば10倍)を使用して観察します。
【注意】この観察方法による識別が困難な場合は、プレパラートを作製して細胞形態を観察する必要があります。

観察倍率 150 倍=接眼レンズ15倍×対物レンズ10倍

2. 細胞形態の観察

コロニーから菌体の一部を掻き取って作製したプレパラートを用いて、光学顕微鏡で細胞形態を観察します。なお、細菌の観察はグラム染色法が常用されますが、ここでの細胞形態観察はグラム染色ではなく、滅菌水をマウント液として作製するプレパラート観察方法によります。

1) 細菌の仲間の放線菌は、カビと同じような菌糸成長・胞子形成をします。しかし、放線菌の細胞サイズはカビよりも一回り小さいため、カビとの識別が可能です(例えば、菌糸の幅は1µm以下)。

2) 球菌などの球形の細胞のサイズは直径で、桿菌などの長方形あるいは卵円形の細胞は「長さ(長径)×幅(短径/太さ)」(長さは種類によって様々)で示されることが多いです。本コラムでは、細菌・酵母・カビの細胞サイズを分かりやすく比較できるように、「幅」で表記しています。

注)細菌のように細胞サイズが小さい場合、水等でマウントした場合、ブラウン運動のため細胞観察が難しい場合があります。その際は、マウント液の量を少なめにして、少々時間をおくことで多少観察しやすくなる場合がありますが、確実な観察にはグラム染色がお勧めです。