糞便からのDNA抽出方法

腸内細菌叢解析においては、DNA抽出法の選択が結果に重要な影響を及ぼします。DNA抽出は、大きく溶菌と精製の工程に分かれ、溶菌工程では化学処理と物理処理 (ビーズ破砕法など) または酵素処理との組み合わせが広く用いられています。
精製工程では磁気ビーズ法、スピンカラム法またはフェノール-クロロホルム法が用いられています。当社では凍結糞便や保存液に懸濁した糞便からのDNA抽出法にグアニジン溶液とビーズ破砕法を組み合わせることにより、溶菌効率が低いとされるBifidobacterium 属やClostridium 属などのグラム陽性細菌の検出率を高めた方法となっています
(図1)。

図1.当社で実施しているDNA抽出・精製法

当社保存液入りの糞便採取キット (容器) を使用した検体からのDNA抽出は、保存液に含まれるグアニジン塩などの作用により採便後の保存中も酵素の不活化と溶菌が進行することから、室温で保管しても採便時の菌叢が維持されます。また得られたDNA抽出物は、T-RFLP法やアンプリコンシーケンス解析、ショットガンメタゲノム解析に使用可能です。
当社保存液入りの糞便採取キット (容器) 使用上の留意点として、当社推奨とは異なるDNA抽出方法や試薬などを採用した場合、例えばDNA抽出作業の初期に遠心により糞便と上清を分離し、上清を除くという作業をした場合には、グアニジン溶液の作用により保存液中に溶菌した微生物由来のDNAが沈降せずに除かれることに留意する必要があります(Hosomi et al., Scientific Reports 2017;7:4339)。
また、酵素や試薬との相性などがあることもわかっています。当社では、表1に示すDNA抽出キットで、遠心をせずに保存液に懸濁した糞便からPCR増幅可能なDNAが抽出できることを確認しております。各キットを使用することで得られる微生物の存在割合が微妙に異なるため、同じ試験系では同一のキットを使用することをおすすめします。
保存液入り糞便採取容器の使用上の注意点として、保存液に対して便の量が多すぎた場合、一部の菌の増殖を抑えきれない可能性があることから(Hosomi et al., Scientific Reports 2017;7:4339)、当社ではスプーンタイプの採取容器では0.1 g 以下の便を採取していただくこと、採取後1週間以内に冷蔵保管していただくことを推奨します。

保存液入り糞便検体からのDNA抽出時、遠心後の上清を除去すると腸内細菌叢が変化するため、糞便懸濁液からの抽出を推奨します。

表1.保存液入り採便容器から遠心せずにDNA 抽出が行えることを確認したDNA 抽出キット
キット名メーカー
MORA-EXTRACTKyokuto Pharmaceutical, Tokyo, Japan
ISOSPIN Fecal DNA Nippon Gene, Toyama, Japan
ISOIL for Beads Beating Nippon Gene, Toyama, Japan
NucleoSpin DNA Stool MACHEREY-NAGEL, France
QIAamp PowerFecal Pro DNA KitQIAGEN, Germany
DNeasy PowerSoil Pro KitQIAGEN, Germany

上記のDNA 抽出キットを用いずにDNA 抽出を行う場合は、以下の方法を推奨します。