細菌機能遺伝子解析 (単一機能遺伝子・MLSA)

特長

  • 16S rDNAで種の識別が困難な分類群に有効

  • 論文に基づき、 有効な遺伝子領域をご提案

  • 近隣結合法 (NJ法) 、最節約法 (MP法) 、最尤法 (ML法) から選択可能

  • 複数の遺伝子を組み合わせて解析するマルチローカス遺伝子解析 (MLSA) にも対応

概要

細菌の機能遺伝子は、菌体細胞の維持や増殖に不可欠な酵素タンパクをコードする遺伝子やストレスタンパク遺伝子などを指し、16S rDNAに比べて進化速度が速く多型であることが知られています。16S rDNAでは菌種の識別が困難であった分類群においても、機能遺伝子を用いた分子系統解析により種レベル (亜種レベル) の同定が可能となることがあります。

分子系統解析手法は、主流である近隣結合法 (NJ; Neighbor Joining) のように距離行列 (Distance matrix)による手法にくわえ、最節約法 (MP; Maximum Parsimony) や最尤法 (ML; Maximum Likelihood) が用いられています。当社では、何れの方法でも対応可能です。

マルチローカス遺伝子解析 (MLSA; multilocus sequence analysis) は、16S rDNAや機能遺伝子などのハウスキーピング遺伝子 (housekeeping gene) を複数組み合わせて解析を行うことから、菌種間でのDNA塩基配列の差異が大きくなり、種レベル (亜種レベル) で解像度の高い解析を可能にします。解析対象とする機能遺伝子領域はrecA 、gyrA 、 gyrB 、 rpoA 、 rpoB 、 hsp60 、 pheS などがあり、菌群により有効な遺伝子領域が異なります。

解析可能な分類群は、論文など既報のあるものを基本とします。

解析事例

解析事例の一部を以下に示します。これ以外にもBacillus subtilisグループやStreptococcus mitisグループなど、複数の実績があります。詳しくはお問い合わせ下さい。

recA 遺伝子解析の報告例

Lactiplantibacillus plantarum (旧名Lactobacillus plantarum ) グループの識別

L. plantarum グループに含まれる菌種間では16S rDNA塩基配列の差異が小さく、特にL. plantarum と L. pentosus の識別は非常に困難です。本グループでは、recA 遺伝子単独でも2菌種の識別に有効です。

マルチローカス遺伝子解析の報告例①

Lactobacillus delbrueckii の6亜種間における亜種レベルでの同定

L. delbrueckiiの6亜種は、種々の手法を組み合わせてもその識別は非常に困難です。しかし、7遺伝子 ( fusA ,gyrB , hsp60 , ileS , pyrG , recA , recG ) を連結したDNA塩基配列を用いた分子系統解析により、6亜種を識別することが可能です。

マルチローカス遺伝子解析の報告例②

Burkholderia cepacia complexにおける菌種の識別

B. cepacia complexに含まれる菌種は、16S rDNA塩基配列による相同性が互いに99%以上を示し、その識別が非常に困難です。しかし、7遺伝子 ( atpD , gltB , gyrB , recA , lepA , phaC , trpB ) を連結したDNA塩基配列を用いた分子系統解析により、菌種を明確に識別することができます。

受入可能な検体

種類

必要量

備考

平板培養物

1 枚

当社での培養確認を必須とします。培養条件をご指示下さい。
生育性や純粋性に疑義がある場合には、 ご連絡します。

液体培養物
スラント ( 斜面培養物 )
アンプル
グリセロールストック

1 本

シーケンス生データ (ab1 ファイル )
塩基配列テキストファイル

シーケンサーから出力された生データ (ab1 ファイル ) から配列決定し、解析することも可能です。 詳しくはお問い合わせ下さい。

解析の流れ
分子系統解析の場合

  • 文献調査

  • 培養・純度確認

  • DNA抽出

  • PCR増幅

  • シーケンス

  •  塩基配列決定

  •  相同性検索

  •  分子系統解析

納品内容

試験項目

報告内容

付属データ

機能遺伝子解析 (BLAST)

・ 国際塩基配列データベース照合結果の上位30位

・ DNA塩基配列データ
・ シーケンス波形データ

機能遺伝子解析 (recA 含む )
MLSA

・ 国際塩基配列データベース照合結果の上位30位
・ 分子系統解析に使用した配列の登録情報一覧
・ 系統樹
・ 考察 (同定に至った経緯の文章説明) + 同定結果

・ 分子系統樹ファイル
(PowerPoint)
・ DNA塩基配列データ
・ シーケンス波形データ

価格・納期

【単一機能遺伝子】
recA遺伝子解析 (Lactiplantibacillus plantarum グループ ) はセットメニューとなります。

解析例

単位

単価(税抜)

目安納期

シーケンス
(1,500 bp 程度まで )

分子系統解析

総額

1株 (1 機能遺伝子 )
+分子系統解析

50,000 円

21,000 円

71,000 円

20営業日~

2株 ( 各 1 機能遺伝子 )
+分子系統解析
(1 系統樹に 2 株を含める場合 )

100,000 円

(50,000 円× 2) 

21,000 円

121,000 円

recA 遺伝子
+分子系統解析

53,000 円

15営業日~

【MLSA】

解析例

単位

単価(税抜)

目安納期

シーケンス
(700 bp程度まで)

 分子系統解析

総額

3機能遺伝子

78,000 円

68,000 円

146,000 円

24営業日~

5機能遺伝子

133,000 円

98,000 円

231,000 円

7機能遺伝子

164,000 円

127,000 円

291,000 円

  • 常用培地以外の培地や嫌気条件での培養などをご指定の場合、追加費用が必要となります。【ガイド】 追加費用のご案内をご参照下さい。
  • 多検体でご依頼の場合の目安納期は、お問い合わせ下さい。
  • DNA塩基配列データ、シーケンス波形データおよび分子系統樹ファイルは、報告時にお届けします。

ご依頼前の同意事項

・ 別途、プライマー合成費が必要な場合があります。
・ ご依頼前の同意事項 (共通) を必ずご確認下さい。
・ PCR時のポリメラーゼ反応エラーおよびシーケンサーのシグナル強度に起因する混合塩基の判定、ばらつきにおける試験結果への影響は考慮しておりません。
・ 検体の状態によりPCR増幅ができないことがあります。
・ バイオセーフティレベルは、「細菌:日本細菌学会バイオセーフティ指針」、「カビ・酵母:Atlas of clinical fungi」または「各保存機関の情報」 を採用しています。他の機関や海外との情報が異なる場合があります。
・ バイオセーフティレベルは、病原体の危険度レベルに基づく分類です。結果に報告されるバイオセーフティレベルは、当社がその安全性(危険性)を保証するものではありません。
・ バイオセーフティレベル (BSL) は、各微生物種に対し定められています。報告書で示すBSLは目安であり、検体自体のBSLを示すものではありません。