お客様のお困り事
お客様より、このような相談をいただくことがあります。
木材、壁紙、布製品、エアコン、水回り等の製品に発生した黒ずみや付着物について、
・カビかどうか確認したい
・微生物が関与しているか知りたい
・微生物が検出されるか確認したい
・発生したカビや細菌の種類を知りたい
・再発防止のために原因調査の手がかりを得たい

製品に発生した黒ずみや付着物は、カビや細菌等の微生物が関与している場合がありますが、微生物が関与しない場合もあります。しかし、見た目だけで微生物が関与しているかを判断することは難しいです。
当社では、顕微鏡観察、MALDI-TOF MS、DNA塩基配列解析等の微生物試験により、黒ずみや付着物に微生物が関与しているか、またはどのような種類の微生物であるかを確認することができます。
当社の提案
1.顕微鏡観察(微生物確認試験)
黒ずみや付着物の正体は、肉眼で観察するだけでは判断できません。そのため、まずは顕微鏡観察による微生物確認試験を提案します。
黒ずみや付着物等の異常が確認できる検体を送付していただき、当社で顕微鏡観察を行います。
これにより、以下のような確認が可能です。
・微生物が存在するか/微生物が主体かどうか
・細菌、酵母、カビ(糸状菌)のいずれであるか
微生物確認試験を実施することで、汚れや異物の主体がカビ等の微生物か、または汚れや異物の中に微生物が存在するのかを確認できます。

2.微生物分離
顕微鏡観察で微生物の存在が確認された場合は、次に微生物分離を行います。
微生物の種類を調べる微生物同定試験では、対象となる微生物だけを純粋培養した分離株が必要です。そのため、まずは検体中から目的の微生物を分離し、分離株を取得します。
当社の微生物分離試験では、検体を寒天平板培地に塗抹し、そこに生育したコロニーを釣菌・培養することで、分離株を取得します。

3.微生物同定試験
微生物分離によって分離株が得られた後は、対象となる微生物やお客様の目的に応じて、微生物同定試験を実施します。
MALDI微生物同定試験(Biotyper)
MALDI微生物同定試験は、細菌および酵母を迅速に同定したい場合に適した試験です。
質量分析装置を用いて、微生物株のタンパク質のマススペクトルパターンを解析し、データベースと照合することで属名や種名を同定します。
細菌および酵母については約4,000種の登録菌種数がデータベースに収録されており、最短即日で同定結果を報告できます。その迅速性から、衛生管理等スピードを求められる場面で広く利用されています。一方、カビ(糸状菌)についてはDNA塩基配列解析が適しています。

DNA塩基配列解析
分離株をより確実に同定したい場合にはDNA塩基配列解析が適しています。分離株のDNA塩基配列をデータベースに照合することで、帰属種の同定や近縁種の推定ができます。
DNA塩基配列解析で照合するデータベースはMALDI微生物同定試験で照合するデータベースよりも登録種数が多く、細菌、カビ、酵母を問わず、MALDI微生物同定試験では同定が難しい微生物でも同定できる場合があります。また、新種のように明確な属名や種名が同定できない分離株の場合でも、分子系統解析の結果から近縁種を推定することができます。
DNA塩基配列解析で納期を重視される場合には、短納期のRapid解析を検討して下さい。

カビ形態Rapid
分離株がカビ(糸状菌)の場合には、「カビ形態Rapid」も利用できます。
費用を抑え、属レベル程度が同定できれば十分な場合に適した試験です。
カビを顕微鏡で観察し、その形態的特徴から識別可能なレベルまで分類群を同定します。一般的に、属(または近縁種)レベルまでの同定が可能です。(形態的特徴が観察できない場合には同定に至らないことがあります。)

微生物試験で分かること
お客様の目的や検体の状態に応じて、適切な試験の組み合わせを提案します。
| 試験項目 | 内容 | 得られる情報・結果 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 微生物確認試験 | 顕微鏡観察 | ・微生物が存在するか ・微生物が主体かどうか ・微生物が細菌、カビ、酵母のいずれであるか | 属名・種名は分かりません。 |
| 微生物分離 | 目的微生物の分離・培養 | 微生物同定試験に必要な分離株を取得 | 微生物が死滅している場合や、培養条件が適合しない微生物は分離できません。 |
| MALDI微生物同定試験(Biotyper) | 微生物のタンパク質のマススペクトルパターンによる同定 | ・微生物の属名や種名 ・バイオセーフティーレベル(BSL)※1 | データベースに登録されていない微生物は同定できません。 |
| DNA塩基配列解析 | 遺伝子解析による同定 | ・微生物の属名や種名 ・近縁種 ・分離源情報 ・バイオセーフティーレベル(BSL)※1 | DNA塩基配列の相同率が高い近縁種や、既知種の塩基配列に対し相同率が低い場合には、明確な同定結果が得られない場合があります。 |
| カビ形態Rapid | 形態観察による同定 | ・カビの属名または近縁種 ・バイオセーフティーレベル(BSL)※1 | 形態的特徴が十分に観察できない場合は、同定できないことがあります。 |
- バイオセーフティーレベル(BSL)とは、微生物の危険度を示す指標の一つであり、WHO「実験室バイオセーフティー指針(第3版)」に基づき、BSL1〜BSL4の4段階に分類されています。
試験ごとの価格・納期の目安
| 試験内容 | 価格(税抜) | 納期目安※2 |
|---|---|---|
| 微生物確認試験 | 12,000円 | 4営業日 |
| 微生物分離※1 | 細菌:52,000円 カビ・酵母:32,000円 | 細菌:16営業日~ カビ・酵母:25営業日~ |
| MALDI微生物同定試験(Biotyper) | 細菌・酵母:6,000円~ カビ:11,000円~ | 細菌・酵母:1営業日~ カビ:3営業日~ |
| DNA塩基配列解析 | 細菌:20,000円~ 酵母:26,000円~ カビ:28,000円~ | 9営業日~ |
| Rapid解析 | 細菌:27,300円~ 酵母:35,100円~ カビ:39,000円~ | 4営業日~ |
| カビ形態Rapid | 15,000円 | 4営業日 |
- 微生物分離の価格と納期は目安です。検体の状態や培養状況、対象微生物の種類によって変わる場合があります。また、嫌気培養が必要な場合は、さらに2~4営業日程度かかります。
- MALDI微生物同定試験、DNA塩基配列解析、Rapid解析およびカビ形態Rapidの納期は、分離株取得後の目安です。微生物分離が実施する場合は、別途微生物分離に要する期間が必要となります。
よくあるご質問
黒ずみや付着物は、見た目だけでカビかどうか判断できますか?
いいえ。黒ずみや付着物は、カビや細菌等の微生物が原因の場合もあれば、汚れや変色等微生物以外が原因の場合もあります。そのため、見た目だけで判断することは困難です。
当社では、顕微鏡観察による微生物確認試験を実施し、微生物が存在するか/微生物が主体かどうか、また細菌・カビ・酵母などの微生物の種類を確認します。
写真だけでカビかどうか判断できますか?
写真だけでは、黒ずみや付着物がカビや細菌等の微生物によるものかを正確に判断することはできません。
実際の検体を送っていただき、顕微鏡で観察し、必要に応じて微生物同定試験を実施することをおすすめします。
カビと細菌では、おすすめの同定試験は異なりますか?
はい。対象となる微生物によって適した同定試験は異なります。
細菌および酵母では、迅速に結果を報告できるMALDI微生物同定試験(Biotyper)がおすすめです。
一方、カビ(糸状菌)は、DNA塩基配列解析やカビ形態Rapidを提案しています。
微生物が分離できないことはありますか?
あります。
微生物同定試験では、対象となる微生物だけを培養した分離株が必要です。しかし、検体中の微生物数が少ない場合、微生物が死滅している場合、培養条件が適合せず微生物が生育しない場合には分離できないことがあります。
微生物の属名や種名を知りたい場合は、どの試験を依頼すればよいですか?
顕微鏡観察による微生物確認試験で微生物の存在が確認された後、微生物分離を行い、MALDI微生物同定試験(Biotyper)、DNA塩基配列解析、カビ形態Rapid等の微生物同定試験を実施します。
適した試験方法は、対象となる微生物や目的によって異なるため、検体の状態を確認した上で提案します。
微生物同定試験では必ず種レベルまで分かりますか?
必ずしも種レベルまで同定できるとは限りません。
データベースに登録されていない微生物や、近縁種との区別が難しい場合には、属レベルでの同定や近縁種の推定となることがあります。
黒ずみや付着物はどのようなものを送ればよいですか?
黒ずみや付着物が確認されている製品、部材、または付着物を採取したものを送付してください。
詳細について、送付前にお気軽にご相談ください。
黒いカビのようなものがありますが、人体への影響は調べられますか?
同定試験の結果のみからその検体の健康への影響を判断することはできません。ただし、同定結果にはバイオセーフティーレベル(BSL)が併記されるため、健康への影響を考察する際の参考として頂けます。
カビについて、菌種の情報を調べていただけますか
はい。
学名が分かるカビについて、学術論文などから調査する「菌種情報調査サービス」というサービスがあります。生育温度、生育pHなど、微生物制御に利用できる情報を提供します。これらの情報は、対象となる微生物の性状を把握するための参考情報としてご利用いただけます。
古い製品に発生した黒ずみでも試験できますか?
試験できる場合があります。
ただし、時間の経過により微生物が死滅している場合や、検体の状態によっては微生物分離や同定ができないことがあります。まずは検体の状態をご相談ください。
試験方法が分からない場合でも相談できますか?
はい。相談できます。
検体の種類や発生状況、お客様が確認したい内容を伺った上で、目的に応じた適切な試験方法を提案します。
試験方法が分からない場合でも、まずはお気軽にご相談ください。