お客様のお困り事
お客様より、配管内にバイオフィルム(スライム状の付着物)が発生し、以下のようなご相談をいただきました。
① 付着物が微生物由来かどうかを確認したい
② 微生物が確認された場合、どのような微生物が存在するのかを知りたい
③ 今後の微生物抑制を検討したいため、生菌に関する情報も知りたい
④ できるだけ多くの情報を効率的に取得したい(納期も重視)

※画像はイメージです。
試験の概要
当社では、バイオフィルム(スライム状の付着物)の発生原因そのものを直接特定するサービスは提供しておりませんが、微生物が存在するかどうかの確認試験や、その微生物に関する情報を得るための各種試験がございます。
得られた情報をもとに原因の可能性を絞り込むことで、無駄な検討や試行錯誤の削減が期待されます。
今回の事例では培養法と非培養法を組み合わせた同時解析を提案し、実施しました。
当社で行った試験内容
まず、顕微鏡観察で付着物に微生物(細菌、カビ、酵母)が存在しているかどうかを確認しました。その結果、微生物が存在し、主に細菌であることが分かりました。
バイオフィルム(スライム状の付着物)中の細菌が何かを調べるためには、2つの方法を実施しました。
- 培養法:細菌を分離・培養し、DNA塩基配列解析により菌種を同定する方法
- 非培養法:アンプリコンシーケンス解析(菌叢解析)によって、細菌の構成を網羅的に調べる方法
▼培養法
◎微生物分離:
細菌を純粋培養し、寒天培地上の単一コロニーとして取得するための試験です。生菌を対象とします。
◎Rapid解析(短納期のDNA塩基配列解析):
微生物分離で得られた単一コロニーについてDNA塩基配列解析を行い、細菌を属または種レベルで同定します。生菌を対象とします。
▼非培養法
◎アンプリコンシーケンス解析:
菌叢解析です。バイオフィルムに含まれている細菌のDNAを直接解析し、どのような細菌がどの程度の割合で存在しているかを網羅的に調べます。培地の種類、嫌気・好気、培養温度、生菌や死菌を問わず解析可能です。
同時実施にした理由
お客様より「生菌に関する情報も知りたい」「多くの情報を取得したい」とのご要望があったため、培養法と非培養法の両方をご提案しました。
生菌情報の取得には培養法が必要ですが、微生物分離の成否は、対象微生物の生存状態や培養条件に依存します。そのため、実際に培養を行わない限り結果は分からず、また、バイオフィルム(スライム状の付着物)中に存在するすべての微生物を分離できるとは限りません。
通常、当社はアンプリコンシーケンス解析(非培養法)を実施したうえで培養法をご提案していますが、本事例ではお客様のご要望を踏まえ、培養法が失敗してからアンプリコンシーケンス解析を実施すると、再試験による時間ロスが発生するリスクを考慮し、両手法を同時に実施することにしました。
また、アンプリコンシーケンス解析は19,000円/検体と比較的実施しやすい価格帯であるため、初期段階から併用しやすいという利点もあります。

結果
培養法と非培養法の両面から微生物情報を取得することで、
- 分離株に基づく菌種同定
- 付着物の微生物構成(菌叢)
の双方を把握することができ、より多くの情報をお客様に提供できました。
補足
今回の事例では、培養法(分離・培養による同定)で検出された微生物は、非培養法(アンプリコンシーケンス解析)でも確認されましたが、両者の結果は異なる(どちらか一方でしか検出されない)ケースも少なくありません。
〈培養法で検出された微生物が、菌叢解析でも確認される場合〉
■ 要因:
- サンプル中の微生物が主に生菌で構成されている
- 培養条件が適合している など

〈どちらか一方でしか検出されない微生物がある場合〉
■ 要因:
- 培養条件に適合しない微生物は、培養法では検出されないが、非培養法(アンプリコンシーケンス解析)では検出される
- 一部の増殖しやすい微生物は、培養法では検出されやすい
- 非培養法(アンプリコンシーケンス解析)は死菌のDNAも検出されるが、培養法では検出されない
- 微生物量が少なく検出下限以下になると、非培養法(アンプリコンシーケンス解析)では検出されないことがある など

価格と納期(目安)
- 微生物確認:約1週間
- (同時進行)微生物分離:約2週間
- (同時進行)Rapid解析(短納期のDNA塩基配列解析):約1週間
- (同時進行)アンプリコンシーケンス解析:約1ヶ月
合計:約1ヶ月~
- 微生物確認:12,000円/検体
- 微生物分離※1:52,000円/検体
- Rapid解析(短納期のDNA塩基配列解析)※2:27,300円/検体
- アンプリコンシーケンス解析:19,000円/検体
合計:約110,300円
- 微生物分離の価格(税抜):
◎細菌対象:52,000 円/検体
◎乳酸菌対象:65,000 円/検体
◎カビ・酵母対象:32,000 円/検体
常用培地以外の培地や嫌気条件での培養などをご指定の場合、追加費用が必要となります。 - Rapid解析の価格(税抜)
細菌16S rDNA-500 Rapid:27,300円/検体~
酵母26S rDNA-D1/D2 Rapid:35,100円/検体~
カビITS rDNA Rapid/28S rDNA-D1/D2 Rapid:39,000円/検体~
