〈背景〉
腸管内に存在する有機酸は、腸内細菌が食物繊維や炭水化物を代謝した代謝産物です。また、タンパク質やペプチドの消化でも増加することが知られています。近年、有機酸の中でも特に短鎖脂肪酸(SCFA)については、GPR41やGPR43など宿主の受容体を介して肥満や糖尿病に関連することが報告されています。そしてこれらの代謝産物は腸内細菌叢と密接に関係しており、ヒトの健康に関する研究では短鎖脂肪酸と腸内細菌叢の両方を評価する動きが広がっています。
当社は、腸内環境の研究に取り組む企業やアカデミアの皆様に向けて、糞便中有機酸(短鎖脂肪酸)分析や腸内細菌叢解析の受託サービスを提供しています。当社がお届けした結果は、ヘルスケア分野の食品の機能性評価、製品開発、臨床研究、学術論文など多くの分野で活用されています。当社は、受託サービスを通して腸内環境の研究に携わる皆様をサポートいたします。
当社受託サービスのご紹介
短鎖脂肪酸分析や腸内細菌叢解析を委託する際、各分析を複数の機関に依頼するためには、分析の数だけ糞便検体を採取する必要があります。このことは、被験者や研究者の負担が大きくなる一因となります。また、糞便検体は採取後すぐに凍結し、冷凍便で送付する必要があるためコストも大きくなります。
当社では、短鎖脂肪酸分析と腸内細菌叢解析の一括受託ができますので、お客様の業務の効率化が図れます。
さらに、当社では、分取せずに短鎖脂肪酸分析と腸内細菌叢解析を同時に解析できる「メタボロキーパー®(糞便)採取キット」をご用意しています。このキットを用いれば、糞便検体を室温で保管でき、短鎖脂肪酸分析と腸内細菌叢解析の一括委託が可能です。冷蔵/冷凍の必要がありませんので、被験者にとっての採取・提出の負担も軽減されます。

糞便中有機酸(短鎖脂肪酸)分析
LC(pH 緩衝化ポストカラム電気伝導度検出法)により、糞便中有機酸(短鎖脂肪酸)を定量分析します。
特長
- 糞便検体をご送付いただければ、前処理を含め当社で対応
- 多くの学術論文で引用実績あり
- 公的研究機関から民間企業まで、幅広い利用実績あり
分析項目
| 分析項目 | 定量下限値 | 分析必要量 |
|---|---|---|
| 酢酸、プロピオン酸、コハク酸、乳酸 | 0.05 mg/g | ヒトの場合200 mg マウス、ラットの場合60 mg |
| iso-酪酸、iso-吉草酸、n-酪酸、n-吉草酸、ギ酸 | 0.1 mg/g |
価格・納期
| 検体数 | 単価 | 納期 |
|---|---|---|
| 1~3検体 | 30,000円 | 17営業日~ |
| 4~6検体 | 19,000円 | |
| 7~29検体 | 14,000円 | |
| 30検体以上 | 8,000円 | お問い合わせ下さい |
腸内細菌叢解析|アンプリコンシーケンス解析
糞便中の菌叢(細菌、アーキア、カビ・酵母)を解析します。
特長
- DNA 抽出からデータ解析まで当社内で作業
- 界~種レベルで解析
- 多くの学術論文で引用実績あり
- 大学医学部や食品会社の研究部門など、多様な分野で利用実績豊富
- 「当社標準プロトコル」と「JMBC推奨プロトコル」の2種類のプロトコルから選択可能※1
- JMBCはヒト糞便検体を対象
仕様
| 対象微生物 | 細菌 ・ アーキア | カビ・酵母 | ||
|---|---|---|---|---|
| 解析対象 | DNA | |||
| 遺伝子領域※1 | 細菌 | 16S rDNA V1 ~ V2 領域 | ITS2 領域 | |
| 細菌 | 16S rDNA V3 ~ V4 領域 | |||
| 細菌・アーキア | 16S rDNA V3 ~ V4 領域 | |||
| アーキア | 16S rDNA V3 ~ V4 領域 | |||
| リード数※2 | 3万リード以上/検体 | |||
| 解析機種 | MiSeq i100シリーズ(Illumina) | |||
| データ解析※3,5 | セット1:Metagenome@KIN | RDPおよびテクノスルガ・ラボ「微生物同定データベース」 | RDP | |
| セット2:QIIME2※4 | Greengenes databaseあるいはSILVA database※6 | UNITE | ||
- 解析領域の違いによる結果の違いについては、当社では考察しません。
- 3万リード取得を目安に解析を実施しますが、獲得できる配列数は検体の性状により変動します。
- データ解析は、セット1またはセット2のどちらかをご選択下さい。
- セット2 (QIIME2) は一次解析までの報告です。二次解析 (多様性解析、統計解析) は、別途追加解析のご指示を下さい。
- RDP (Ribosomal Database Project)、Greengenes database、SILVA databaseおよびUNITEは公共の解析データベースです。
- GreengenesまたはSILVAのどちらかご選択下さい。データベースの違いによる結果の違いについては、当社では考察しません。
解析項目
標準:リードの同定、バーチャートの作成、シーケンス生データ
オプション:QIIME2によるα・β多様性解析、統計分析ソフトRによるデータ解析、PICRUSt2による予測メタゲノム解析など。
詳細は[こちら]をご覧ください。
価格・納期
| 依頼形態 | 単価 (税抜) | 目安納期 |
|---|---|---|
| 検体にてご依頼の場合 | 15,000円/検体 | 20 営業日~ |
| DNA抽出物にてご依頼の場合 | 12,000円/検体 | 18 営業日~ |
| fastqファイル納品の場合 | 14,500円/検体 | 20 営業日~ |
| DNA抽出物にてご依頼、fastqファイル納品の場合 | 11,500円/検体 | 18 営業日~ |
リアルタイムPCR解析
アンプリコンシーケンス解析で得られる結果は、検体中に存在する微生物の相対的な存在比です。
特定の微生物の存在量を定量的に把握する場合にが、リアルタイムPCRが有効です。
リアルタイムPCRをご検討の方は当社試験項目[生体 リアルタイムPCR解析(定量)]をご覧ください。
メタボロキーパー®(糞便)採取キット
特長
- 糞便検体を凍結することなく、室温(1~30℃)で1ヶ月保管可能
- 糞便中の有機酸(短鎖脂肪酸)と腸内細菌叢を維持
- 学術論文により、「メタボロキーパー®(糞便)採取キット」の有効性が報告されています。
A newly developed solution for the preservation of short-chain fatty acids, bile acids, and microbiota in fecal specimens. Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition, 2023;72:263.
論文は[こちら]から
仕様

型番:FS‐0015
内容物:「メタボロキーパー®」1本、楽流カップWIDE1枚、取扱説明書1式
対応可能な試験項目
- 糞便中有機酸(短鎖脂肪酸)分析
- アンプリコンシーケンス解析
- リアルタイムPCR解析※1
- T-RFLP フローラ解析 (MN-2 法 )
- 「メタボロキーパー®(糞便)採取キット」を用いたリアルタイムPCR解析をご依頼いただく場合、糞便中有機酸(短鎖脂肪酸)分析の同時依頼が必要です。
価格・納期
- 価格:32,000円/10キット。
- 納期:10 営業日(北海道、青森県、秋田県、沖縄県、九州などは 11 営業日)
採取方法

仕様方法動画
受入可能な検体
ヒト糞便 ※マウス、ラット、ブタ、ウシ、ウマ、ニワトリ、イヌ、ネコ等の糞便も対応可能です。詳細はお気軽にお問い合わせください。
必要検体量・送付方法
- 食物残渣が多い場合には分析必要量に満たないことや、計量時のロスもありますので、分析必要量以上の送付をお願いします。
- 分析必要量は1項目当たりの量になります。複数項目を同時にご依頼の場合には、お問い合わせ下さい。
| 試験項目 | 分析必要量 | 使用容器 | 目安 | 参考情報 | 送付方法 |
|---|---|---|---|---|---|
| 糞便中有機酸(短鎖脂肪酸)分析 | 〈ヒトの場合〉200 mg 〈マウス、ラットの場合〉100 mg | スクリューキャップチューブ(2 mL) | ヒトの糞便:グリーンピース2~3粒 | 分析必要量の1.5倍以上 目安200 mgの場合には0.3 mL以上を目安に分取 | 採取後速やかに冷凍保管、冷凍輸送 |
| メタボロキーパー®(糞便)採取キット | キット付属のすり切り棒でスプーンすり切り1杯 | ![]() | 採取後室温保管、室温輸送 (冷蔵推奨) | ||
| 腸内細菌叢解析 | 0.2~0.5 g | スクリューキャップチューブ(2 mL) | ヒトの糞便:グリーンピース2~3粒 | 分析必要量の1.5倍以上 目安200 mgの場合には0.3 mL以上を目安に分取 | 採取後速やかに冷凍保管、冷凍輸送 |
| メタボロキーパー®(糞便)採取キット | キット付属のすり切り棒でスプーンすり切り1杯 | ![]() | 採取後室温保管、室温輸送 (冷蔵推奨) | ||
| 当社糞便採取キット(ブラシ型) | ブラシ全体 | ![]() | 採取後室温保管、室温輸送 (冷蔵推奨) |
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